<外伝>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

 男色家船長が大きな声で叫ぶものだから、その場にいた全員が一斉に私達の方を振り向いた。

するとお父様とお姉様たちがこちらを振り向き……。

「レベッカッ!! つ、ついに見つけたぞっ! お前の父だっ! ずっと探していたのだぞっ!!」

お父様が大きな声を張り上げた。

「レベッカッ!! やっと見つけたわ……!! 待っていなさいっ! 今あんたを捕まえて監禁してやるんだからっ!!」

何故か、怒りの形相を向けてジョセフィーヌお姉さ様がこちらへ向って駆け出してきた。
その形相の恐ろしいことと言ったら計り知れない。

「キャアアアアアアアッ!!」

あまりの恐怖に絶叫すると、ロミオがいなないた。

「ヒヒヒーンッ!!(ご主人さまの危機だっ!!)」

そして背中を向けると、まるで矢のように走り出した。

「ヒヒヒヒンッ!!(しっかり捕まっていてくださいね!)」

「あ、ありがとう! ロミオッ!!」

私はロミオの首に抱きついた。

「レベッカ様っ!! どこへ行くのですかっ!?」

その後ろをレティオの背中にまたがったナージャさんが追いかけていく。

「ちょっと待ちなさいっ!! どこへ行くのよっ!!」

「待ってくれっ! 行かないでくれっ!! お前の父さんだぞーっ!!」

その背後ではジョセフィーヌお姉様の叫び声と、お父様のだみ声が響き渡っていたが、今の私にはそんな事はどうでも良かった。
一刻も早く、あの場から離れて逃げなければ!!
お、お姉様に‥…監禁されてしまうっ!!



 ロミオとレティオは風のようにジャングルを走り抜け、ついにミラージュ達の元へとたどり着いた。

浜辺に到着すると、ようやく船酔いから開放されたのかミラージュ達が起き上がって話をしていた。

「ミ、ミラージュッ! サミュエル王子にセネカさんっ!!」

私がものすごい形相で、ロミオにまたがって走ってきたのを目にした3人は流石にこれはただ事では無いと感じたのだろう。

「どうしたのですかっ! レベッカ様っ!」

ロミオが止まるとすぐさま、3人はミラージュを先頭に駆け寄ってきた。

「そ、それが……」

あ、駄目だ。未だに先程の恐怖が身体から抜けきらない。

「ミ、ミラージュ……」

すると後からかレティオに乗って駆けつけてきたナージャさんが私に変わって説明した。

「大変です、皆さんっ! この島にすでに先客がいたのですよっ! しかもあろうことか、レベッカ様の御家族が現れたのですっ!!彼等はものすごい形相でコチラに向ってきました。それで大慌てて逃げてきたところなのですよ!」

「ま、まぁ何ですってっ!?」

ミラージュは怒りの形相を顔に浮かべた。

「レベッカ様の御家族と言えば、国にいたときは散々まだ幼いレベッカ様をこき使い、しかもあんなクソ王子に強引に嫁がせた最低な家族です! それが今度は図々しくもこんなところまで追いかけて来るなんて……許せませんわっ!」

ミラージュはロミオから降りた私に語りかけた。

「よいですかレベッカ様。何人たりとも、レベッカ様も脅威になりそうな存在は、この私が返り討ちにしてさしあげますっ!!」

物騒な台詞を口にするミラージュはとても頼もしかった。

「勿論、俺だって君に危害を加えそうな輩から守ってやるからな?」

サミュエル王子も今日は何だか男前に見える。

「うん、ミラージュが主と仰ぐ方だからな。私も本気を出さねばなっ!」

「本当ですか? 皆さんありがとうございますっ!」

うん、この仲間たちがそばにいれば……きっと大丈夫っ!


けれど私は知らなかった。

もっと恐ろしい魔の手が……私に迫ってきているということに――