新月の天使

俺は何を言っても、そんなつもり無いが嫌味にしか聞こえなくなりそうなので何も言わずただただ背中を撫で続けた。


10分程度そうしていると、突然多色が立ち上がった。



『どうした、多色?』


『………』


『あっ……、おい!』




すぐに追いかけようとしたけど、やめた。


一人になりたい時だってあると思うし、多色が走っていった方は玄関だ。


きっと大丈夫。




*    *    *    *




あの日を境に、多色は変わった。


今まで以上に勉強や運動を頑張り、体術の訓練も倍になっていた。


そして………俺への態度も変わった。




『おい十色。お前、それでも本当に御曹司か?最近成績が落ちてきてるらしいな。長男だからって、調子乗ってんじゃねぇの?』


『……別に、調子に乗ってない。俺はやりたいことをやってるだけだ』


『はぁ〜〜、ほんっと馬鹿だな。お前さ、立場考えてる?お前が変なことすると、風宮の名が穢れるだろって言ってんの』





明らかに、俺を馬鹿にしている態度。


誰が見ても一目瞭然。


どうして急に……?



『まぁ?どーせお前は後継者の座から引きずり降ろされて俺が会社を継ぐんだけどな?……ははは!』



多色は言いたいことを全て言ったようで、笑いながら去って行った。


会話がとても小学生らしくなかったが、これがウチの日常。


何かあるとすぐに罵倒の嵐。


俺はそんなことしてないけど、両親と多色は俺の欠点探しばかり。