新月の天使

「それじゃあ、次に会えるのは月曜日なんだね」


遥くんがニコッと笑いながら言った。



「うん。どうしても外せない用事で」


「なぁ、その用事って何?」



瀬那くん。


何かと私の情報を引き出そうとしてくる。



「お母さんをお手伝いする約束があるんだー」


「……母親思いなんだな」



それでも、私はうまく嘘をついてかわす。


嘘をつくのはずっと辛い。


でも……夢犀 星那という名前さえ嘘の私がこんなちょっとした嘘で辛いなんて。って思われるかもしれないけど、私は" 夢犀 星那という人間を演じている "状態。


だから名前を偽っていても、嘘をついている感覚があまりない。


それに、もう高校に入って数ヶ月だ。本名以外で呼ばれることに最初こそ慣れなかったけど、最近は慣れてきた。


引き返すことなんて………できないし。




「私、そろそろ帰るね」



もう19時だから、帰らないと。


明日は……新月だから。


たくさん寝ないと活動中に眠たくなっちゃう。


皆に手を振って、部屋を出る。


今日は金曜日だから、次皆に会えるのは3日後だ。


自分の中にある寂しいという気持ちを無視して私は家に帰った。





そしてやって来た土曜日の夜。


時刻は8時。


ウィッグも眼鏡もつけていない、本来の姿に黒パーカーにショーパン。更にフードを深く被れば準備OK。


私は家を出て、今日のターゲットの場所に向かった。