新月の天使

会いたい……。


笑優が引っ越した真実は、俺が小学校高学年になった時に教えられた。


笑優以外の家族が死んで、1人隣町の施設に入ったと。


それを聞かされた時は、悲しくて悲しくてたまらなかったが、今はその事実を受け入れ、笑優と必ず再会して幸せにしたいと思っている。


そのために、中学に入ってからは何回も隣町に通った。


通うついでに、薬の取引をしているやつは捕まえて。


ある日、1人で見回りをしていた時。


近くでパトカーのサイレンが鳴り響き始めると、俺の数m先の曲がり角から、1人の女が出てきた。


真っ黒のパーカーに、ショーパン。


何を急いでいるのか、まあまあな速さで走っている。


次の瞬間、強い風が吹いた。


向かい風で、髪が後ろに流れる。




「……あっ」




歩く足が、ピタリと止まる。


今、の……声……。


さっきの風で女のフードがとれ、その下に被っていたと思われるキャップがこっちに飛んできた。


トサ……と音を立てて、俺の前に落ちたそれ。


持ち主が目の前にいるため無視できず、キャップを拾う。


渡そうと思って前を見ると、ほんの一瞬だけ───────顔が見えた。



………!




「笑、優…………」





ほんの少し。ほんの少し見えただけ。


それでも─────────わかる。


暗闇にも綺麗に浮かぶ、水色の瞳。


サラサラで、柔らかそうな金髪。


俺が、見間違えるはずがない。