【Side瀬那】
12年前。
家の近所に4人家族が引っ越してきた。
それを親から聞かされた時はまだ4歳だったこともあり、全く興味がなく、ただただ「ふ〜ん」と思っていた。
あの子に会うまでは──────。
ある日、リビングで車のオモチャで遊んでいた時。
ピンポーン。と、インターホンの音が響いた。
母親が「はーい」といつもより少し高い声で応えると、「先日近所に引っ越してきた" 結愛 (むすびめ)"です。挨拶に来ました」というと女の声が聞こえた。
なんとなく興味が湧いて、母親の後ろをついて行った。
玄関を開けると、さっきインターホンを押したであろう大人の女の人と………俺と同い年くらいの女の子が姿を現した。
2人とも、金髪に水色の瞳で、日本人とはかけ離れていた。
幼いながらに綺麗だと思って、無意識に見続ける。
そんな俺に苦笑した相手の母親が、
「私達はちゃんとした日本人だよ。おばあちゃんから受け継いたんだよ〜……って、わからないかな?」
と、言う。
それでも一向に口を開かない俺に、母親が俺の背中を少し強い力でポンッと叩いた。
「ほら、挨拶しなさい。瀬那」
「……………瀬那」
ボソッと名前だけ言うと、「もう!」とまた母親が背中を叩く。
「全然大丈夫ですよ。……笑優、貴方も挨拶して?」
相手の母親がそう促すと、ずっと足に抱きついていた女の子が一歩前に出た。


