長谷 律の分の椅子までは引けなかった。
自分で引いて座ってもらい、タイミングを見計らった大将が水とお手拭きを持って来る。
「律、牛すじ好き?」
「うん、まぁ」
「ほんなら持ってくるわ。今茜音ちゃんと食べてたんよ」
〝大将も一緒に食ったのかよ…〟と独り言を落とし、お手拭きに手を伸ばす。
…気まずい。
私を支えてくれた時、私が顔を上げたら長谷 律が動揺しているように見えた。
酔っていたし合っているかは分からないけど、今も顔が赤いような気もするし。
何か話さなきゃ。
「この間舞台を見に行った後、コーヒーごちそうさまでした」
「…ぁ、うん。口には合ったかな」
「はい。とっても美味しかったです…」
…会話が終わった。



