心の中からエールを送って、会計を済ませた上司と頭をペコペコ下げる部下くんが出ていくのを見送った。
お店には大将と私の二人だけになり、静かな時間が流れ出した。
包丁で何かを切る音と、時折大将のため息も聞こえる。
私もそれをただ見つめるだけで、気を遣わない時間。
「そういえばな」
「はい」
「律、二人で来てくれた次の日に店に来たんよ」
大将が手元に視線を落としたまま、何の前触れもなく私に話しかけてきた。
ふと思い出したらしい。
「いつも来る前は律が俺に電話してくるのに、その時は突然来てな。茜音ちゃんのこと、相談されたわ」
「私のこと?」
「距離感が分からんって。舞台に招待したは良いけど、距離を詰めすぎたやろかって俺に聞きに来てん」



