心が解けていく





ここのお手拭きに触れると落ち着くし、冷たい水を飲むと頭が冴える。


初めて来た時もそうだったし、今もそう。



右隣に居た人が居ないだけ。

それだけなのに、何となく寂しい。


サラリーマンの盛り上がりは絶好調なのに、誰も居ないようなガラんとした心の隙間がある。




「はい、ほっけの刺身。今日はこの間より弾力あると思うよ」


「いただきます」




包丁を持つ手を止めて笑顔を向けられながら、一口ほっけを食べた。


甘くて美味しいのは、同じ。でも大将の言う通り、弾力が違う。




「ブリンブリンしてます。モチモチって言う方が良いのかな…」


「そうそう、茜音ちゃんの言ってること分かるわ。ブリンブリンとモチモチの間やな」