「そうですか…。長谷さん居ないのに、何でこっちに案内してくれたんですか?」
「他のお客さんが居るのに、律の話したら怪しまれるやろ?まぁ男の人やったし気付かんとは思うけど、念のためな」
「やっぱり…。大将のそういうとこが好きって、前に長谷さん話してくれました」
「おぉ、何か照れるやん。急に言わんといてよ」
頭の上に四角く乗っている白い帽子を取って頭を掻くと、〝立派なほっけが獲れたで、ご馳走したるわ!〟と大将の豪快なサービスを貰い、個室ではなくカウンターに案内してもらった。
盛り上がるサラリーマンと一席空けて座ると、お手拭きに手を伸ばす。
封を開けて広げると、穏やかな湯気が良い香りを立たせている。



