心が解けていく




舞台の余韻は二週間ほどあった。


欠かさなかった観葉植物の水やりを忘れ葉っぱが萎(しな)び、仕事に集中できず珍しがられるほどミスを連発した。



「藤波さん、最近元気ないですけど、何かありました?」


「そう?そうなのかな…」




他人の気持ちに疎いという部下にまで、心配される始末。


長谷 律が引っ張りだこなのは良いこと。

でもあの時、連絡先を交換するとか次に会う口実を作るのを忘れてしまったことに、家に帰ってから気づいた。


マネージャーさんが呼びに来ていなかったら、何かしら状況は変わっていたかもしれない。

でもそんな後悔をしても遅く、長谷 律はテレビの向こうの遠い存在に戻った。



チャンネルを回すたびに目の前に居て、ファンの気持ちが少し分かった気がする。