マネージャーさんらしき男性が、焦った表情でこちらに走ってきた。
そうだ。長谷 律は有名人なんだった。
「マジ?…行かなきゃ、ごめん!」
「大丈夫です。今日は招待してもらって、ありがとうございました」
「こちらこそ!じゃ、またね!」
私がここで引き止めるわけにはいかない。
長谷 律を待っている人は沢山居て、そっちの方がはるかに大事。
「…あ、ごちそうさまって言うの忘れた」
手を振って送り出した後、軽くため息が出た。
そして、〝またね〟ってまた言ったなと思い返す。
長谷 律の言う通り、〝また〟がいつか来るかもしれない。
またなんてないと、テーマパークの時に思ったのにすぐに出会えたし、今回は私も乗っかってみよう。
し損ねたコーヒーのお礼が言いたい。



