心が解けていく





「ご馳走になってしまって、すみません」


「そこはありがとうって言ってくれると嬉しいんだけどな」


「…ありがとうございます」


「いいえー」




吐息で湯気を飛ばして一口啜ると、甘みが強い中にもコクのある味がした。



コーヒーだと思い込んで表面を見てみると、カフェラテのような色をしている。



「カフェラテ?」


「ううん、モカ。茜音ちゃんブラックって言ったけど、演劇終わりの一杯は案外甘いほうが落ち着くよ」


「確かに…。甘くて美味しいです」


「無意識だけど、気分が高揚してると思うの。それにここのモカ、茜音ちゃんに飲んで欲しかったのもあるし」