「…何か恥ずかしい。知らないことばっかな私が行ってしまって、ごめんなさい」
「謝らないで。俺は茜音ちゃんが見に来てくれたことが嬉しいんだから。それに、そんなこと知らなくても良いから」
何か飲む?と、さっきまで睨めっこしていた自販機に促される。
一回は断ったけど、舞台を見に来てくれたお礼だと言って聞いてもらえなかったので、甘えてコーヒーをご馳走に。
自販機の小銭投入口に集中する背中は少し猫背で、おまけにストレートネック。
現代病を取り入れた風貌で、親近感が湧くと同時に、実在する人間なんだとその背中をまじまじと見つめた。
〝君が居たから頑張れた〟〝嬉しかったから〟
そういう言葉が自然と口に出る。



