心が解けていく





「最前で見ててくれたから、気が引き締まったのかも」


「最前で見てた人はいっぱい居ましたよ?大御所の方だって居ただろうし」


「大御所?」


「私は見えなかったですけど、最前は芸能界のお知り合いの方が座るんですよね?」




私の返答に目を丸くすると、すぐに私の肩をバシバシと叩きながら声を上げて笑い出した。




「痛い…」


「違うよ茜音ちゃん!関係者席は違うところだよ。茜音ちゃんもそこに招待しようと思ったんだけど、せっかくなら一番前で見てて欲しかったの」




私が席に着いた時には既に照明がついておらず、てっきり大御所席に通されたとばかり思って、恐れ多かった。


今思えば、一般のファンの人たちと同じ空間に居たら、もっとファンは大騒ぎしていたかも。