何て紳士な方なんだろう、でもお金のことは甘えちゃいけない。
たった百円でも。
「多分あるので大丈…、長谷さん!?」
「えへへ。来てくれてありがとう」
思い込みで耳に入ってきたけど、改めて顔を見て耳に入って来る声は確かに長谷 律で、途端に心持ちが変わる。
誰も居ないとはいえ、両手を大きく横に広げて私に近づいたので、上半身を後ろに反らせて手のひらを前に出して制止させた。
「ここは!…人目もあるので」
芸能人が軽々しく一般人に抱きついたら、うっかり誤報が出回ってしまう。
私のお願いを聞いてもらえて、ハグは無くなったけど、つまらなさそうに口を尖らせている。



