場違いなことは重々承知で、その上で長谷 律の前では明るく振る舞いたい。
せっかく招待してもらえたのに、相応しくない振る舞いはしたくない。
「落ち着け…私」
とりあえず飲み物を飲んで、心を落ち着かせよう。
ラウンジには、サバサバした性格の人でも優柔不断になってしまうほど、自販機が数十種類並んでいる。
落ち着きたいのに、迷ってしまうなら逆効果だった。気が違う方に向くから、ある意味落ち着けるかも。
淹れたてのコーヒーを提供してくれる機械を選んだ。
「…十円玉しかない。百円どこだ…」
財布を何度か振りながら、どうにか百円は見つけたけど、もう一つが出てこない。
「百円出しましょうか?」
突然隣から聞こえてきた声は、男の人でてっきり先ほどの案内の人だと思った。



