心が解けていく





「藤波様」


「、?」




先ほど席まで案内してくれたスタッフさんが、また私に声をかけてくれた。




「長谷が藤波様に会いたいと申しております。裏にご案内させて頂きますので、よろしいでしょうか?」


「会いたい…?」





耳元で小声で言われたから、この会話は誰にも聞こえていない。


長谷 律が私に会いたいと言っている。



嬉しい。まだ私のことを認識してくれている。

でも、もっと相応しい友達は居る。



それが頭に浮かんで、素直に喜べなかった。




「ありがとうございます」


「では、お足元気をつけてください」