分からないまま拍手を送っていると、舞台の上から右下に視線を向けた主人公と目が合い、ニコッと微笑み掛けられた。
答えるように拍手の速度を少しあげて、同じように微笑み掛けると、満足したのか前を向き直して観客の歓声にお辞儀をしている。
歓声が止むことはなく、舞台から演者が居なくなっても、しばらく拍手は続いた。
常日頃応援している俳優を見に来ている人も居るし、無類の演劇好きで見に来ている人も居るだろう。
でも今回は、主人公を目的に来ている人が多いはず。
余韻に浸りながら現実に戻っていく、一般客の虚無的な表情を見て、胸のつかえの答えが分かった気がする。



