こういう展開は王道で、これが俗に言うキュンシーンなんだと、他人事のように傍観していたが、今回は何だか違う。
肩が重い。背中に呼吸が入らない。
これは何だろう。
苦しくて、息は吸えるのに量が少ないから、吐けない。
胸あたりを摩ってみても変わらなくて、長谷 律を見ると苦しさが増した。
キスの時間はそう長くなく、二人の唇が触れていたのかも分からないぐらい、私の座っている席は死角だった。
離れるとすぐに抱き合い、客席からは空気が破れそうなほどの拍手が送られる。
私も合わせて拍手をしていると、舞台に立つ二人はこちらを向き、両手を上げてから深くお辞儀をした。



