心が解けていく





「じゃあこうしよう。一旦招待するから、来て。それで茜音ちゃんが面白くないと思ったら、チケット代払うってどう?これなら来てくれる?」


「…はい。吟味します」





結局私が折れることになり、長谷 律が主演の舞台に招待してもらうことに。


先に楽しみができるなんて、初めて。



友達が居ると、こういうことがあるんだ。だからみんな、仕事を頑張れるんだ。





「また来月」


「はい、楽しみにしてます。稽古、頑張ってくださいね」


「うん、ありがと。おやすみ」


「おやすみなさい。ありがとうございました」




軽く会釈すると、ヒラヒラと小さく手を振ってくれた。


私も控えめに、胸の前で手を振ってみる。




私が駅に入って見えなくなるまで、手を振ってくれていたらしく、芸能人にご馳走になるご飯は格段と美味しかったなと考えながらお店の方角を見ると、長谷 律が別れた場所でまだ立っていた。