「今日はテレビ収録が一本あるだけだから、茜音ちゃんと同じ時間には帰ってこれると思う」
「収録がスムーズに終われば…、ですね」
「絶対に終わらせる。俺が巻いて見せる」
腰に手を当てて威張る律くん。
まさか私に、こんな幸せが待っていたなんて思わなかった。
芸能人との幸せなんて、普通じゃない。
でも私はそれを望んで、受け入れた。
「いってらっしゃい」
「はい、いってきます」
私たちの見送りの恒例。
誰かが出かける時は、玄関でハグをする。
律くんが言葉だけの見送りは寂しいからと、ハグもしようと提案してくれた。
それに倣って両手を広げる律くんに、私も手を軽く広げて律くんに近づく。
すると、広げていた手を窄めてその手は私の頬に。
唇も近づいて数秒間、柔らかく重なった。



