返事をしない私に、慌てて言葉を付け足す律くん。
「これ、カードキーなんだ。本当はこんなこと言うはずじゃなかったんだけど、あいつとの話が上手くいかなかったんなら、そのままこの家から逃げるっていう手もあるなって…。茜音ちゃんがこの家を離れたくなかったら良いから!」
…すごい喋るじゃん。
私が相槌を入れる間もなく、話続けた律くん。
反応を伺うように、上目遣いで私を見ている。
「合鍵…」
カードを両手で持ち上げて小さくお辞儀をすると、律くんも合わせてお辞儀をする。
そうだな。
友基が今回の話し合いで納得したとも思えないし、また家にやってくるかもしれない。
それに怯えながら過ごすのも、窮屈で大学生の時の息苦しさと変わらない。



