深呼吸を何度か繰り返して、ようやく体が動かせるようになった頃、律くんに電話をかけた。
「…もしもしっ!」
「律くん。はぁっ…」
一気に力が抜けた。
ワンコールで出てくれて、心にストンと落ちてくる、重低音の落ち着いた声が聞こえる。
「茜音ちゃん?話はできた?」
「できました、何とか。でも、解決はしてないと思います」
「そっか。とりあえずはお疲れ様だね。そっちに行くから、待ってて」
「ありがとうございます…」
とりあえず電話をして、落ち着いたら久遠に行こうと思っていた。
でも、律くんがこっちに来てくれるなら、甘えよう。
もし久遠に行こうとして、外に友基がまだ居たら怖いし。
お茶を飲んで一気に上がった心拍数を落ち着かせて、三十分ほど経っただろうか。



