「何してんの」
「り、…」
カバンを抱えるようにしゃがんで、友基の強引な行動がおさまるのを待っていると、玄関で待ってくれていたはずの律くんが、私と友基の前に立っていた。
思わず律くんの名前を呼びそうになって、慌てて口を閉じる。
帽子とマスクをしているから、パッと見ただけでは誰か分からないはず。
友基も、突然話しかけられて呆然としている。
その隙にカバンを友基の手から剥ぎ取り、律くんの後ろに隠れた。
「…あ、もしかして茜音の彼氏っすか?」
「そうですけど」
「どうも、元カレです。よろしく」
ひったくりとも見えた行動を無かったかのように、呑気に律くんに手を差し出している。
律くんは当然その手を握り返さず、聞いたこともない低く鈍い声で友基を威嚇しているのが分かる。



