作った料理を褒められたことがないのかというほど、私が素直な感想を述べたら顔の全筋肉を緩ませて、また奥へ消えて行った。
そんな大将が面白くて、リアクションを思い出してニヤけていると、右から視線を感じる。
あ、隣に芸能人が座ってたんだった。
時々芸能人オーラが薄まる長谷 律を、ゆっくり見ると頬杖をついてこちらを見ていた。
「長谷さん、食べないんですか?」
「うん。茜音ちゃんへのお礼だから。それより、あの人と気が合うみたいだね」
「気が合うと言いますか…。あの方の料理、すごく美味しいから」
「ふーん…」
ふーんって。
私の返事に不満があるようで、携帯を取り出して弄り出した。
「…拗ねてます?」
「拗ねてません」
拗ねてますね。私の質問に食い気味に返事したところ、完全に拗ねてる。



