「お待たせしました。朝釣ってきたほっけの刺身。まずは何もつけずに食べて、その次にわさび醤油でお召し上がりください」
「大将が釣ってきたんですか!?」
「そうや。ほっけなんて刺身で食べられるとこ、ないから。珍しいもん、味わって食べて」
いただきます…。小声で呟いて、ほっけをまじまじと見つめる。
お寿司屋さんに行っても、生のほっけはお目にかかったことがない。
大将曰く、貴重なほっけの刺身は新鮮じゃないと、生で食べられないらしい。
淡白な魚はあんまり得意じゃないからなと声には出さずに、恐る恐る口に運んで何度か咀嚼する。
「…美味しい。甘味があって、淡白なのに味が濃いです」
「でしょ?新鮮ってそういうことよ」
「淡白な魚、得意じゃないんですけど。好きになれました」
「お、良かったね。じゃあ次は、しんじょの餡かけ持ってくるわ」



