こんなちっぽけな私のために?
そこらへんの平凡な私より、律くんの将来を取る方が大事に決まってる。
だからといって、あの女優さんに従順になられるのも嫌だけど。
「茜音ちゃんが律の立場でも、同じことするやろ?」
「…そんな気がします。それに、律くんの将来の方がって思いながらも、拒否してくれたことが嬉しくもあります」
「愛やなー。おじさん、羨ましいわ」
ハハハハッ!と電話越しに、鼓膜が破れそうなほどの笑い声が聞こえて、携帯を耳から遠ざけた。
「律には、茜音ちゃん元気やって伝えてるから。会いたいとは言って拗ねてるけど、律も元気そうや。律に何か言っとくこと、あるか?」
「言っとくこと…。あ、大将に言いたいことが」



