この日以来、あまり好きではない仕事に没頭し、滅多にしない残業なんかしたりして、とにかく律くんを頭から追い出そうとした。
大将から連絡は来るけど、電話ではなくメールでもらっている。
大将もお店が忙しいし、メールの方がお互いに空いた時間で見れるから。
たまに電話がかかってきて出るけど、出るたびに律くんの声への恋しさが増して、律くんと連絡を取っている大将得意のモノマネで、目を瞑って元気がどうか想像している。
「今日も、関係者に謝罪まわりらしいわ。律は何も悪くないのにな」
「ドラマは、中止なんですかね…」
「やろうな。律も、あの気味悪い女優と仕事したくないやろ」
マネージャーさんと謝罪に行って、これ以上印象が悪くなりすぎないようにするらしい。
戦略とはいえ、元凶は女優さんなのに謝るのは律くんなのが、何回聞いても納得できない。



