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「律。あんなこと、言えるようになったんやな。今までそういう人、作らんって言ってたやん」
茜音ちゃんが店を出るとすぐに、俺にニヤケの視線を送った。
「うっせ」
「さっきも、俺がおるのに堂々とイチャイチャしよって」
「どこがよ」
「好きになって良かった…。とか言ってたやん」
言われてみれば、そうだった。
大将の今の忠実な再現は気持ち悪かったけど、素直な気持ちを躊躇いなく本人に伝えられたのは、初めてだ。
先に進んでしまったら、程よい距離感と関係が崩れてしまうんじゃないか。
そう思っていたのが、頭の中の強靭な鉄格子から解き放たれていたみたい。



