〝思い上がってんね。ごめん〟と、人差し指で頭をカリカリ掻きながら、はにかんでいる長谷 律。
芸能人だからとか、確かに考えてなかった。
あ、さっき助けた人に、また会った。もう一回話しかけよう。ぐらいの気持ちで話しかけたし、
出待ちとか追っかけはしたことがないから、群がられる芸能人の気持ちは理解できない。
そうか。私みたいに多少の無関心さがある方が、有り難いと思われるんだな…。
そう呑気に捉えた。
「そうでしたか。私こそ、トップアイドルにこんな気安く声かけるの、良くなかったですね。ごめんなさい」
「いやいや。むしろ嬉しかったって。こんな子、初めて。何か興味湧くわ」
「興味…。庶民からは何も珍しいものは出ません…」
長谷 律はトップアイドルだったことを、忘れていた。意識し始めた途端、私たちの間に見えない分厚い壁を感じて、萎縮してしまう。
でも、長谷 律はそんな私を大いに笑ってくれた。



