「こんな俺だけど…。嫌いにならないでね」
「え?」
聞き間違いか?
さっきまで、決意を固めた強気の声が聞こえていたのに。
「もしかして俺のこと、嫌いになった?」
「嫌いになった方が良いですか?」
「それは嫌だ…」
面白半分で言ったら本気に捉えたらしく、律くんの腕に力が入って私の体が絞られそうになる。
律くんなりの価値観と強い芯が、外部からの衝撃で崩れる瞬間は、この雰囲気には似合わないけど可愛いかもしれない。
「本当に嫌いにならないでね?」
「大丈夫です。そんなに心配しなくても、十分沼にハマってますから」
〝安心した…〟と、絞られすぎた体が元に戻り、律くんのまだ少し弱気な顔が見れた。



