心が解けていく





たまたま目の前に、助けてくれそうな人が居ただけだけど、俺のことを名前しか知らない珍しい女の子に、この子を振り向かせたいと思った。




アイドルとしてそう思ったと感じていたけど、帰りの電車で再会して、舞台にも見に来てもらって…。


その間にどれだけ仕掛けても、俺のアクションを華麗に交わしていく茜音ちゃん。




自分でも気づかないうちに意地になって、振り向いてほしい、俺がこんなに茜音ちゃんを好きだって気づいてほしい。


茜音ちゃんの塩対応に、心を踊らされていた。




茜音ちゃんに会えない時間がもどかしくて、久遠に来ていないか仕事帰りに毎日寄ったし、茜音ちゃんと連絡先を交換していなかったから、もし来たら大将に連絡をもらうようにも頼んだ。


でも全く連絡が来なくて、いじめかと大将を問いただすと、〝来てへんもん、連絡もできんやろ。アホか〟と、怒られる始末。