〝入るよ〟
大将にしては珍しく小さい声で、お茶を持ってきてくれた。
すぐに帰ろうとしているところを、律くんが引き留める。
「大将も聞いてく?あの報道の話」
「俺より茜音ちゃんに話したってや。俺はあの報道、全部嘘やって分かってるし。それに、見張り役せんと」
「…ありがと。じゃあ見張り、よろしく」
カウンターに戻っていった大将を見送って扉を閉めると、律くんがかしこまって正座をする。
「心配かけてごめん。あんまりこういうの、慣れてなくて」
「律くんが謝ることじゃないです」
「ありがとう」
「…元気ですか?」
返事が困ることを分かっていて聞いて、当然のように苦笑いが返ってきた。



