自分の手は身動きが取れず、距離を取ろうと思っても動けない。
長谷 律の顔が近い。
女の人より綺麗できめ細やかな肌が、至近距離で見える。
「おーい、茜音ちゃーん」
くぐもった声が聞こえる中、そう言った気がする。
眉と目を上げて、聞き返す素振りをする。
「俺より、友基の方が好き?」
多分、そう言った。
そんなわけない。友基は、もう違う。
脳震盪になるほど、思い切り首を左右に振った。
違うよ。ポロッと出てしまったけど、だからと言って長谷 律の方に気持ちが向いていないんじゃない。
その思いを伝えたくて首を振り続けると、長谷 律の手が離れて、同時に私の手も耳からゆっくり剥がされた。
手が私の膝に戻ると、長谷 律の手も私の手の上に置かれて、包み込まれる。
目尻を下げてニコッと笑うと、〝あのね〟と優しい声が聞こえた。



