「さっきは、ありがとう」
「やっぱり長谷さんでした」
「よく分かったね」
「何となく、そんな気がして」
二人して軽く会釈を繰り返して、話題が切れると、長谷 律から提案を持ち出された。
「君、名前聞いても良い?」
「な、名前!?名乗るほどの者でもないです…」
「名乗ってよ。僕に話しかけておいて、名乗らず電車降りるの?」
人助けをして〝名乗るほどの者でも…〟ならかっこいいけど、今使う時じゃなかったな。
まぁ名乗っても、どうせ次の日には忘れ去られるだろうし、言っても問題ないか。
「藤波 茜音(ふじなみ あかね)です…」
「あかねちゃんか。可愛い名前だね」
「あ、あの。あんまり可愛いとか言わない方が…」



