心が解けていく





「…あの、すみません」


「は、はい」


「長谷、律…さん?」




長谷 律にしか聞こえないぐらい、小さな声で問いかけると「いえ、人違いじゃないですか」と拒否の返事が来た。


いやいや。絶対、長谷 律だ。一般人が集りに来たと思って、拒否しただけだ。




「私、さっき骨付き肉食べてた者です」



どんな自己紹介だと思ったけど、こう言わないと伝わらないから。

恥ずかしいけど、これならすぐ分かるはず。




「え、さっきの…。友基、の女の子?」


「あぁ、友基…。はい、そうです」




友基、根に持たれてた。だって、これしか名前、思い浮かばなかったんだもん。


話しかけた相手が私だと分かると、下に向いていた視線が少しだけ上に上がってきた。



バッチリ目が合うと、マスク越しでも分かる笑顔がこちらを向いた。