先生の金魚

「おはよう。席に着いてー。出席取りまーす」

せんせーが八組の担任である特典は毎日必ず、一度は名前を呼んでもらえること。

しかもフルネームで。

毎朝きちんと登校するだけで必ず貰えるログインボーナス。
三年間、ずーっと担任でいてくれるならメグはどんなに高熱が出ようと嵐が起きようとも、這ってでも登校してみせる。

「紅小夜子」

「はい」

呼ばれたサヨちゃんは真夏の炎天下で唯一癒しを与えてくれる風鈴の音みたいな声で返事をした。

サヨちゃんのほうを見てせんせーが小さく笑った。

サヨちゃんはメグとリップの話をしていた時みたいに俯いた。

恥ずかしがり屋さんだ。

せんせーにあんな表情されたムリもないけれど。
ていうか、ずるい。

せんせーは無自覚な残忍な人。

ああやって誰でも勘違いさせて虜にさせちゃうんだ。

「時枝迴」

もし生徒が本気になって色恋沙汰なんて起こされちゃって
ぐっちゃぐちゃに大変なことになっても知らないんだから。

「時枝ー?時枝迴…!」

「…はいっ!?……はい」

「はーい。体調悪いところ無いか?」

「な、いです…」

「はい。次ー」