先生の金魚

それから三十分くらいはただ校庭の桜を眺めていたと思う。

途中でクラスメイトの男子が話しかけてきた。

「時枝さん時枝さんっ!」

「なぁに…?」

「きみ、F中でしょ?」

「どうして?」

「受験の時、塾通ってただろ?ほら、あいつ。塾、一緒だっただろ?」

あいつ、って言いながら男子は、せんせーに群がる女子のそばでこっちを見て意味深に笑ってる男子くんを指差した。

「そう、だったかも?」

「あっはは!あいつ忘れられてんじゃんっ」

「でもそれがどうかしたの?」

「時枝さん、すげぇ有名だったの知らない?」

「有名?」

「そりゃそーでしょ。こんな美人、滅多にいないし」

「…ありがとう」

「俺はそこの塾行ってないんだけどさ。あいつがいっつも自慢してたんだよ。女神が居るって」

「大袈裟だよ…」

「せっかく一緒のクラスになれたんだしさ。今度みんなで…」

男子が言いかけた時だった。

男子のブレザーの襟を摘み上げるようにして
せんせーが男子の背後に立っていた。

「入学早々面倒ごと起こすなよー」

「わっ!由良くん、規制早すぎだって!」

「当たり前でしょーが。教師の目の前で何やってんだよ」

「しょーがないじゃん。時枝さん、すっげぇ可愛いしっ」

「分かるけど相手の気持ちも考えろなー?」

その瞬間に、メグは絶対に真っ赤に赤面してたと思う。

男子くんが言った″可愛い″に、「分かるけど」って言った!?

分かるけど!?
せんせーも、そう思ってたの!?