先生の金魚

「改めて、入学おめでとう。これから一年間、よろしく。まずは、みんなの大切な名前と顔をきちんと把握させてもらおうかな」

ニコッて笑ったせんせーに、派手な女子達が「せんせーい、彼女いるんですかー!?」とか「先生にだったらいくらでも個人情報教えたーい」なんて言ってふざけている。

せんせーは、「おいおい。まだちゃんと教師で居させてほしいなぁ」なんて言って、やわらかく笑った。

「じゃあ全員ちゃんと戻ってきているか呼んでいくから返事をしてください」

スッとていねいに息を吸ってせんせーの声が一人ずつ名前を奏でてゆく。

ひとり、ひとりと呼ばれていくごとにメグの心臓も少しずつ鼓動を速めてゆく。

「時枝…時枝廻」

「は…ぃ…」

ドクンッて大きく心臓が跳ねて自分の名前に嫉妬してしまいそうなくらい、せんせーの声は甘ったるくて、
その甘さがせんせーの舌先に永遠に残ってしまえばいいのにって思った。

初めてメグの名前を呼んだ感覚を一生忘れないでいてほしかった。

「へぇ。めぐり、っていうんだね。″輪廻″の″ね″、だね。素敵な名前をもらったね」

輪廻。

命が廻るやつだ。

ああ。
この瞬間だけでもずっとずっと繰り返されたらいいのに。