今日は我慢しない。


 私は、Ωじゃなかったらもっと生きやすかったのにって、お母さんも報われたのにって、自分の性を呪ってきた。

 これはΩだからこその宿命で、αなら絶対に幸せになれるって決めつけていた。

 でもそんなことはなく、佐柳も私と同じで、〝αじゃなかったら〟って、苦しんできたのかな。


「……」


 返す言葉に詰まっていると、佐柳がハッとする。


「って俺、なに話してんだ。 ごめん、忘れて」


 そう言っていつもの笑顔を作った佐柳は、脚立を持ちあげた。


「次は教室棟? とっとと貼りに行っちゃおう」


 そう言って、何事もなかったかのように歩き出す。

 そういえば、いつもそうだ。

 佐柳は笑ってごまかす。


 ……そっか。

 αはみんなの憧れ、希望みたいなものであるのと同時に、嫉妬や僻みの対象。

 きっと誰かに泣きごとを言うことも許されなかったんだ。

 どんなに苦しくても言えない、知られちゃいけない。

 周りに悟られないように、一人で戦ってきたの?



 ――俺のせいで



 そうやっていつも、自分を責めてきたの?