いつものようにブラブラと歩き回り、いつものようにフラフラと家に帰ってくる。
家に帰っても誰も居ない。 ペッとさえも居なくなってしまった。
由美子が居た頃には小犬を飼ってたんだ。 でもね、由美子は犬と一緒に出て行ってしまった。
喧嘩したわけでもなく、追い出したわけでもない。 何かが足りなかったのか?
冴えない顔でお茶を入れ、残っていたお菓子を引っ張り出す。 そして食べながらあれやこれやと思いを巡らせてみる。
午前中に撮っておいた動画も上げられた頃だ。 最近はやっとジョークの一つも言えるようになってきたかな、、、?
昔は計算機とメモ用紙と客の顔ばかり見ていたから冗談も言えなかった。 誰かの生活が掛かってる仕事だったからさ。
融資の相談を受けている時に冗談なんて言えないよ。 笑って済ませるような話じゃないんだから。
(もっと気楽な仕事にすれば良かったかな。)って何度も考えた。 でも不器用だからさ、合わないんだよなあ。
休みを使って他の仕事を見に行ったことも有る。 でも見てるうちに(合わないな。)って思ってしまった。
学生の頃はそうまで思わなかったんだけどなあ。 涼子が居たからかな?
卒業式の日、涼子は俺にギターをくれた。 その半年後に飛び降りるとは、、、。
俺が書斎として使っていた部屋の机の中に3冊のノートが入っている。 涼子が詩を書いていたノートだ。
大学の寮に荷物を取りに行った時、同室だった人が俺にくれたんだ。 「涼子さんの思い出を取っておいてください。」って。
中学生の時から書いてたんだね。 俺は知らなかったよ。
でもさ、憑りつかれたように読んだもんだ。 そこに涼子の思いが全て詰まっているような気がして、、、。
それから俺は銀行に就職した。 言われるままに全国を飛び回り、大きな融資案件も持たせてもらった。
しばらくは涼子のことも忘れ去ったように働いたよ。 そこに由美子が現れたんだ。
すっかり大人の女になっていた。 「お姉さんのこと、覚えてますか?」
いるともいないとも言えなくて黙ってたら写真を取り出して俺に見せるんだ。 高校生の時に昼休みに写した写真だった。
涼子が真ん中でギターを弾いている。 その右側に由美子が居て、左側に俺が居る。
懐かしい写真だった。
「よくこの写真を持ってたね。」 「姉さんのことは一日も忘れていません。 夢にも出てくるんです。 忘れないでね。」って。
「そうだったのか。 仕事に追われてて考える暇も無かったよ。」 「そうでしょうね。 でもこれからは、、、。」
「そうだ。 ずっと忘れないよ。」 由美子は写真を財布に仕舞った。
俺が30歳の頃だ。 それまで由美子は何をしていたのだろう?
目立たない服装でごくごく平凡に過ごしていたのかもしれない。 元々涼子と違ってインドアなやつだったからね。
俺たちが海へ遊びに行っても由美子は海の家でのんびりと海を見詰めていた。 誘っても出てこなかったんだ。
帰りの車の中でも由美子は一人静かに本を読んでいた。
そんな由美子が「結婚したい。」って言ってきたんだ。 嘘だとは思わなかった。
俺も嫌いじゃなかったしね。 それで挙式はせずに婚姻届けだけを出した。
楽しかったよ。 由美子は犬が好きでね。
日曜日になると犬を連れて二人で散歩した。 「珍しい夫婦だね。」なんて言われたっけ。
そうかもな。 犬を真ん中にして夫婦が歩いてるんだから。
何処にも居ないわけじゃないだろうが、この辺りじゃ珍しかったんだね。
由美子は料理の本を見ながら懸命に料理を作っていた。 味見をするのは俺だった。
もちろん、俺だって手伝ったよ。 何もしないわけにはいかないと思って。
でも仕事が仕事だろう。 夜遅かったり出張で居なかったりするから寂しい思いもさせたよね。
そのうちに由美子も働くようになった。 毎日留守番ってのも退屈だからさ。
俺はもちろん賛成したよ。 部屋に籠ってお化けみたいになるのも嫌だったから。
それで盆と正月には長い休みを貰って旅行した。 あっちこっち行ったことの無い町にも行ったなあ。
50を過ぎた頃には「一生の思い出作りだ。」って言ってロスにも行ったんだよね。
その後、しばらくして離婚したんだ。 呆気なかったなあ。
どちらが悪いとかいいとかいうのは無かったんだ。 何となく離婚届にサインした。
喧嘩してたわけでもないしさ。 特に好き嫌いも無かったんだ。
そして今に至るわけね。 それにしても静かだなあ。
夜になり、前の通りも静かになってしまった。 平日だからかユーチューバーも来ないらしい。
蛍光灯を点けてカーテンを閉める。 数年前までは取り敢えずは夫婦の話し声が聞こえていた居間に一人きり。
何とも侘しい部屋だねえ。 明るくならないものかと考えてはみたがどれもこれも中途半端で、、、。
簡単な食事を作って今夜も宅飲み。 話し相手も居ないおじさんが一人で酒を飲んでいる。
部屋の隅には由美子が俺の誕生日に買ってくれたクッションが置いてある。 思い出すと泣きたくなるから置いてあるだけ。
最近はテレビもあまり見なくなったなあ。 面白くなくてさ。
だからって他のユーチューバーの動画を見ようとも思わない。 張り合うのも嫌だからさ。
最近は迷惑系とか煽り系とか訳の分からんユーチューバーも居るからねえ。 あんなんでどこが面白いんだろう?
大食い系なんてのも居たっけ。 覗いてみたけど面白くなかったなあ。
それだったらさあ、『びっくりニッポン新記録』』みたいにド派手なことをやってみろってんだ。
なあ、盛そばをめっちゃ積み上げて運んでみたりしてさあ、、、。 それだって意味が有るのか無いのか分からないけど。
誰だったっけ? 風呂に牛丼を詰め込んで動画を撮ってた人たち居たよね?
何をしたいのか分からなくて何も言えなかったよ。 うん。
さてさて考え事をしていたら酔いも回ってきた。 気分もいいから寝るわ。
お休み。
家に帰っても誰も居ない。 ペッとさえも居なくなってしまった。
由美子が居た頃には小犬を飼ってたんだ。 でもね、由美子は犬と一緒に出て行ってしまった。
喧嘩したわけでもなく、追い出したわけでもない。 何かが足りなかったのか?
冴えない顔でお茶を入れ、残っていたお菓子を引っ張り出す。 そして食べながらあれやこれやと思いを巡らせてみる。
午前中に撮っておいた動画も上げられた頃だ。 最近はやっとジョークの一つも言えるようになってきたかな、、、?
昔は計算機とメモ用紙と客の顔ばかり見ていたから冗談も言えなかった。 誰かの生活が掛かってる仕事だったからさ。
融資の相談を受けている時に冗談なんて言えないよ。 笑って済ませるような話じゃないんだから。
(もっと気楽な仕事にすれば良かったかな。)って何度も考えた。 でも不器用だからさ、合わないんだよなあ。
休みを使って他の仕事を見に行ったことも有る。 でも見てるうちに(合わないな。)って思ってしまった。
学生の頃はそうまで思わなかったんだけどなあ。 涼子が居たからかな?
卒業式の日、涼子は俺にギターをくれた。 その半年後に飛び降りるとは、、、。
俺が書斎として使っていた部屋の机の中に3冊のノートが入っている。 涼子が詩を書いていたノートだ。
大学の寮に荷物を取りに行った時、同室だった人が俺にくれたんだ。 「涼子さんの思い出を取っておいてください。」って。
中学生の時から書いてたんだね。 俺は知らなかったよ。
でもさ、憑りつかれたように読んだもんだ。 そこに涼子の思いが全て詰まっているような気がして、、、。
それから俺は銀行に就職した。 言われるままに全国を飛び回り、大きな融資案件も持たせてもらった。
しばらくは涼子のことも忘れ去ったように働いたよ。 そこに由美子が現れたんだ。
すっかり大人の女になっていた。 「お姉さんのこと、覚えてますか?」
いるともいないとも言えなくて黙ってたら写真を取り出して俺に見せるんだ。 高校生の時に昼休みに写した写真だった。
涼子が真ん中でギターを弾いている。 その右側に由美子が居て、左側に俺が居る。
懐かしい写真だった。
「よくこの写真を持ってたね。」 「姉さんのことは一日も忘れていません。 夢にも出てくるんです。 忘れないでね。」って。
「そうだったのか。 仕事に追われてて考える暇も無かったよ。」 「そうでしょうね。 でもこれからは、、、。」
「そうだ。 ずっと忘れないよ。」 由美子は写真を財布に仕舞った。
俺が30歳の頃だ。 それまで由美子は何をしていたのだろう?
目立たない服装でごくごく平凡に過ごしていたのかもしれない。 元々涼子と違ってインドアなやつだったからね。
俺たちが海へ遊びに行っても由美子は海の家でのんびりと海を見詰めていた。 誘っても出てこなかったんだ。
帰りの車の中でも由美子は一人静かに本を読んでいた。
そんな由美子が「結婚したい。」って言ってきたんだ。 嘘だとは思わなかった。
俺も嫌いじゃなかったしね。 それで挙式はせずに婚姻届けだけを出した。
楽しかったよ。 由美子は犬が好きでね。
日曜日になると犬を連れて二人で散歩した。 「珍しい夫婦だね。」なんて言われたっけ。
そうかもな。 犬を真ん中にして夫婦が歩いてるんだから。
何処にも居ないわけじゃないだろうが、この辺りじゃ珍しかったんだね。
由美子は料理の本を見ながら懸命に料理を作っていた。 味見をするのは俺だった。
もちろん、俺だって手伝ったよ。 何もしないわけにはいかないと思って。
でも仕事が仕事だろう。 夜遅かったり出張で居なかったりするから寂しい思いもさせたよね。
そのうちに由美子も働くようになった。 毎日留守番ってのも退屈だからさ。
俺はもちろん賛成したよ。 部屋に籠ってお化けみたいになるのも嫌だったから。
それで盆と正月には長い休みを貰って旅行した。 あっちこっち行ったことの無い町にも行ったなあ。
50を過ぎた頃には「一生の思い出作りだ。」って言ってロスにも行ったんだよね。
その後、しばらくして離婚したんだ。 呆気なかったなあ。
どちらが悪いとかいいとかいうのは無かったんだ。 何となく離婚届にサインした。
喧嘩してたわけでもないしさ。 特に好き嫌いも無かったんだ。
そして今に至るわけね。 それにしても静かだなあ。
夜になり、前の通りも静かになってしまった。 平日だからかユーチューバーも来ないらしい。
蛍光灯を点けてカーテンを閉める。 数年前までは取り敢えずは夫婦の話し声が聞こえていた居間に一人きり。
何とも侘しい部屋だねえ。 明るくならないものかと考えてはみたがどれもこれも中途半端で、、、。
簡単な食事を作って今夜も宅飲み。 話し相手も居ないおじさんが一人で酒を飲んでいる。
部屋の隅には由美子が俺の誕生日に買ってくれたクッションが置いてある。 思い出すと泣きたくなるから置いてあるだけ。
最近はテレビもあまり見なくなったなあ。 面白くなくてさ。
だからって他のユーチューバーの動画を見ようとも思わない。 張り合うのも嫌だからさ。
最近は迷惑系とか煽り系とか訳の分からんユーチューバーも居るからねえ。 あんなんでどこが面白いんだろう?
大食い系なんてのも居たっけ。 覗いてみたけど面白くなかったなあ。
それだったらさあ、『びっくりニッポン新記録』』みたいにド派手なことをやってみろってんだ。
なあ、盛そばをめっちゃ積み上げて運んでみたりしてさあ、、、。 それだって意味が有るのか無いのか分からないけど。
誰だったっけ? 風呂に牛丼を詰め込んで動画を撮ってた人たち居たよね?
何をしたいのか分からなくて何も言えなかったよ。 うん。
さてさて考え事をしていたら酔いも回ってきた。 気分もいいから寝るわ。
お休み。



