ご先祖様の力を借りて。

そう言って、自分の荷物が置いてある場所に走り去って行く。

私は少しぽかんとしながら、それを見送る。

少し経ち、はっとして自分の荷物が置いてある場所に向かう。

……どうしよう、とても恥ずかしい。

照れ臭くて、下を向きながら黙々と荷物をまとめる。

挨拶くらいはしたことあるけど、こんなに話しかけてくれたことは初めてだ。

初めてがお礼……少し口角が上がってしまい、にやける。

それを手で隠しながら、荷物を持って特別体育館を出る。


『クラスの人と話せて、良かったわね』

『顔赤い、照れてる』

「……お礼を言われたんです、照れますよ」


顔をつついてくる実弓様に、軽く言い返す。

実弓様は滅多に動かない口角をあげて、楽しそうに笑う。


『珍しい』

「……そんなにつつかないでください」


私が文句を言うと、実弓様はようやくつつくことをやめてくれた。

こういうことは他のご先祖様たちも止めてくれないので、自分で言うしかない。

たまに天見様もしてくるので、やめて欲しい時はすぐに言うようにしている。