ご先祖様の力を借りて。

「……ふっ!」


海晴が氷の槍を投げて、物陰から出る。

妖が物音に気が付きこちらを振り向いたときには、槍はもう目の前に迫っていた。

でもさすが強い妖で、手の爪を使って槍をはじく。

はじいた槍の後ろから海晴が、氷で作った武器をもって飛び込む。


「ガアアッ!」

「はっ!」


爪と武器がぶつかり、ガキンッと音が響く。

海晴はもう片方の手に持っていた武器で追撃するが、また爪ではじかれてしまう。

それを気にせず、海晴は一度下がる。

すぐに氷の槍を三個作り、連続で投げる。

しかし、当然のようにはじかれてしまう。

だが槍をはじいて無防備になっている胴体に、海晴の武器があたる。


「ガアアアッ!」


妖は悲鳴をあげ、傷をおさえるような動きをする。

そんな妖に、海晴は追撃する。

傷をおさえている手に攻撃し、片手を使えなくすることに成功する。

妖は悲鳴をあげながら、反対の爪を海晴めがけて振り上げる。

しかし、結界に大きくヒビがはいり、海晴には傷一つない。

この妖は物理特化だったのか……結界を作っていて良かった。

妖は強くなると、何か特殊な能力を持っている。

賢かったり、力が強かったり……特殊な能力はだいたいが強い。

何回も守ってくれるはずの結界に、大きくヒビがはいるくらい。

私が安心しながら結界をすぐに作れるように集中していると、海晴は爪をはじかれて無防備になっている胴体に攻撃する。


「ガアアアァァッ!!」