少し水のたまった彼女の瞳は、綺麗だった。


ただ、この瞳は、緑色を映さない───。




彼女の話と、関係のないはずなのに、どうしても、そのことだけが頭に浮かんでは消えを繰り返した。








「私の妹、ぬいぐるみに埋もれて寝るのが、夢だったんだ」



目のふちを赤くし、空元気な様子で喋った。



「無理して笑わなくていいよ」




僕が初めて彼女と喋ったとき、ひまわりのような人だと思った。


だけど、それは見えている一部分でしかなかったんだ。







───キーンコーンカーンコーン





チャイムの音に、僕らは同時に顔を上げた。




今が昼休みだったということをすっかり忘れていた。






「また喋ろうね」



彼女はそう言い残して、走り去っていった。