君の瞳に僕の色は映らない

あの時の彼女は、一つどころではなく、全部取っていた。



「あのぬいぐるみ、流行ってたじゃん?」



「……何の話?」



あのぬいぐるみ、とはどのぬいぐるみのことだろう。



緑のぬいぐるみのことなのか。



「え、あのくまのぬいぐるみだって。知らない?私名前は知らないんだけどさ」


「ふーん?全然知らない」


だいたいぬいぐるみにはタグがついてるから、そのぬいぐるみを見たら名前はわかるだろう。



「テレビとかでよく出てるよ?まあいいけど、それが流行ってて、いっこ取ってあげたらいろんな子たちが取ってーってなっただけ」


「なんだ、そういうことか」




あの時、僕と内村は、彼女たちを悪い者扱いしていたけど、実際は子供のために行動するいい人だったわけだ。



一応、この事実は内村に伝えておいたほうがいいだろう。



「うーんとあとさ、」


彼女は少し目線を上にして考えるような仕草をした。