君の瞳に僕の色は映らない

この会話が、彼女とその男の子、つまり。


僕と彼女が、最初で最後の、交わした言葉だったそうだ。






「……覚えてないでしょ」


そこまで話した彼女は、ニヤっと笑みを浮かべてそう言った。


「うん、全然覚えてない」



僕は正直に答えた。





でも、そういえば。


僕は小学校の低学年の頃、学校に行ってなかった時期があった。


そのとき、母親にいろんなところに連れて行ってもらった。


たぶん、そのときだったんだろう。




「浩希くんが、茶色に見えるよって言ってくれたあと、男子たちはどこかへ行ったんだ。だからそのとき、私は君のこと、ヒーローみたいだなって思ったよ」



ちょっと大げさじゃないかと思いながらも、心の中では喜んでいた。


彼女はそのあと、「でも……」と話を続けた。



「そのあと、トイレに行ったとき、偶然聞いちゃったんだよ。『本当にあの絵が茶色に見えたの?』って、お母さんが聞くのを」