そのとき、彼女は思ったことをそのまま口にした。


──この絵、茶色しかなくていやだ。






「今思えば、そんなこといろんな人がいる中で言うなんて、って感じなんだけどね」


彼女は眉を下げて笑った。





──は?これ緑だけど。お前目おかしいんじゃね?


彼女は、周りにいた、同じ小学校の男子にそう言われた。



その時、平日なのに自分と同じくらいの年齢の男の子が、お母さんらしき人と一緒にいた。


そのとき、その男の子は、彼女や彼女の周りにいた人たちに言った。


「僕も、茶色に見えるよ」と。


その時の彼女は驚いたし、何より、その男の子のお母さんがとても驚いた顔をしているのが、今でもずっと頭に残っているらしい。


男の子がそう言うと、男子たちは「変なの」とだけ言って、どこかへ行ってしまった。



───あなたの名前はなあに?


───僕は、緑谷浩希。