「そんだけ知ってたら十分だよ。……だから私、生まれてから緑色ってわかんないんだよね」


緑色がわからないという状態のほうが僕にはわからない。


世の中には、そういう世界もあるんだ。



「よく言われるから言っておくんだけど、私は全く不幸だなんて思ってないからね」


彼女はキッパリと断言した。




「このおかげで君と変えたし、実は千晃と友達になったきっかけもこれだし」


千晃って誰だっけ、と数秒考えた末。


「平山さんか」


「うん」



そうなんだ。



なにがどうなって友達になったのかはわからないけど。




「あ、特に理由はないんだけどさ」


もう僕に背を向けていた彼女が、僕のほうを振り返って言った。


「一応、内村くんには内緒にしてね?他のみんなにも。まあ千晃ならいいけど」


「えっ」


「ん、なに?」



内緒にして、と言われたことに驚いたのではない。