「おにーちゃん?どうしたの?」 



「いや、なんでも……」




桜田仁奈が、ゲームセンターで取った、濃い緑色(・・・・)のぬいぐるみ。





桜田仁奈が茶色のくまと言ったのも。


そのあと、不思議な反応を見せたことも。


平山さんがそそくさとどこかへ行ったのも。


先天性赤緑色覚異常という、誰でも間違えそうな名前を一瞬で言えたことも。


それについて会話を広げようとしなかったことも。




もし彼女が、先天性赤緑色覚異常、なのだとしたら。


この全ての説明がつく。





鳥肌が立った。


あんなに明るい彼女が、こんな秘密を抱えていたとは。




「おにーちゃん?早く読んで!」


知花の声で我に返った。



「あ、ごめん知花」


この本で、僕も知ろう。


正直言うと、この本にあまり興味はなかった。


だけど今、この本を読んで、彼女のことをもっと知ろうと思う。