「色が違って見える?何色に見えるの?」


「うーん、例えば……」



そう話していると。



「浩希くん知花ちゃん、何見てるのー?」



後ろから桜田仁奈の声が。



「先天性赤緑色覚異常」


桜田仁奈は、僕らが開いていた本の一部を読み上げた。



単純に、驚いた。



誰もが初見は間違えそうな病名をスラスラと読んだのだから。



「知ってるの?これ」


「いや、これを調べに図書館に来たんだ」


彼女はふーんと言ってそれ以上会話を広げようとはしなかった。


「これどうゆう意味なの?」


知花が聞いた。


「緑が茶色に見えるんだって。特に濃い緑が───」



濃い緑が茶色に見える。


この現象。





僕は後ろを振り返った。


彼女はもういなかった。